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スチームボーイ

スチームボーイ 通常版

映画館で見られなかったので1年以上遅れでビデオで鑑賞。

普通に面白かったです。当時どうしてあんなに酷評されていたのか分からないくらい。メッセージは明解だし、ストーリーは分かりやすいし、万人が楽しめる少年少女向け冒険活劇。自分でも意外だったのが、期待していたメカや動きの凄さより、物語の方へ気持ちが向いて見られたことですね。確かに7年前ならともかく、今では劇場作品ならあれぐらい描写できていて当たり前だし、映像的にも物語的にも衝撃的な新鮮さがあったわけではない。けれど、スチームボーイはそういうのを狙った作品ではないでしょう。

この作品のテーマは「科学と人の在り方についての、子どもたちへ向けられたメッセージ」だと思いました。科学と発明の大好きな主人公のレイ少年は、最初は大人たちの争いに巻き込まれる形で、祖父の言うとおりに動いたり、父の言うことにもなるほどと思ったりするのですが、最後は父でも祖父でもなく、「自分の判断と意志」でスチームボールをどう使うのか決めます。レイが垣間見た大人たちの本音と真実。それを知って越えられた時、少年は未来を継ぐ者になる。それをヒーローではなく、等身大の少年として描いた。そこが宮崎駿じゃなくて大友克洋なんだなと思いました。

驚いたのはスカーレット。あんな女の子が出てくるとは思ってなかったので(笑)。でも彼女の奔放な無邪気さが物語を説教くさくするのを防いでくれてますね。これもまた変に神秘的な女の子じゃなくて、たまたま巻き込まれてしまった等身大の女の子ぶりがよろしい。レイと共に冒険したこの体験が彼女の未来にも何か形を投げかけるといいなと思いました。


大友克洋を知ったのは「童夢」などの漫画からですが、やっぱり「AKIRA」で好きになりました。当時は衝撃的な作品で、私も少なからず影響受けただろうな~と思います。その大友克洋が新しい映画を作ると聞いて、おおっ、これは見たい、見なければ!と思ったものです。それが今から8年前の1997年夏。アニメージュ7月号で初めて「スチームボーイ」の企画を知りました。その当時の公開予定では1999年となっていました。その後、98年1月号のアニメージュ「デジタルエンジン」特集コーナーに再びスチームボーイの記事が。パイロット版と思われる映画のシーンやカットが多数掲載されていて、期待が高まったのを覚えています(今見直したら、ちゃんとクライマックスの一場面まで載ってて驚き)。

このアニメージュ1998年1月号には大友監督へのインタビュー記事も載っており、当時はまだ主流ではなかったフルデジタルアニメへの意欲と抱負を語っておられて興味深いです。この時から既に「冒険活劇漫画映画」という表現が使われており、そういう方向を目指されていたんだなというのが分かります。「大友克洋の少年少女向け冒険活劇漫画映画」が見られた!ってことで、もっと素直に楽しんでもいいんじゃないかと思うんですけど。


ちなみに、一緒に見た息子たちからは「ラピュタに似てるー」という意見が出てました(^^;が、私はちょっと違うんじゃないかと。飛行石は天然の力だから人間が制御することは出来ないけど、スチームボールは人間が作ったものだから人間が制御可能。そこが違うと。逆に言うと、飛行石は捨ててしまえばそれまでで、以後関わりあいにならなく出来るけど、科学は捨てること出来ないじゃないですか。人間が生み出したものなんだから。嫌でもこれから先も付き合っていかなきゃいけない。飛行石からは逃げられても科学からは逃げられない。共に歩むしかないんです。じゃあどう付き合えば良いのか皆で考えながら。まさにここがスチームボーイの核なんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。

最後にちょっと思ったこと。諸般の事情から大きく公開が遅れた作品ですが、どうせ遅れるならいっそのこと、去年じゃなくて今年の愛知万博に合わせて公開してもよかったんじゃないでしょうかね? だって舞台ロンドン万国博覧会だし。そうしたら全く別の方向からもアプローチできて、この作品が本来ターゲットにしていた層にもっと見てもらえたんじゃないかと…ふと思いました。